まえがき
一年前、AdobeのInDesignを用い縦書きで書き記していたけれど、忘れ去ってしまいそうなことと年会費の支払いが厳しくなって更新できるか微妙なのでこちらに記す。一年前に縦構造で構築した文体をそのまま転記しているので読みにくいかもしれない。
オーラ
オーラ 令和3年8月13日16時
大津市にある小さな喫煙可の喫茶店に入った。この喫茶店に入るのは今回で二度目だ。愛煙家というものは年々と生息領域を狭められているもので、大阪近郊を中心に各地域喫煙可の喫茶店を逐次、グーグルマップとJTマップを基に情報収集し、グーグルマイマップに追加して渡り鳥のように休息地目掛けて渡り歩いている。この妙な癖は、バイク旅で北海道や四国、九州といった遠方を昼夜問わず時間に縛られることなく混雑に巻き込まれることなく移動する際に必要な技であり、300キロメートル圏内にガソリンスタンドがないと旅道具を積んだ約200キログラムもあるバイクは鉄の塊となってしまう。その状況に陥るとバイクを転倒させないよう慎重に手押しで、誰しもがこの状況に求めていない筋力トレーニングを給油所まで独り黙々とすることになってしまうことから、事前の備えとしてマイマップに入力していったことに起因する。
この喫茶店は数台分の駐車場を有しており、喧騒から離れて奥まったところにあるため場所柄的に常連さんで成り立っているようだ。店内は四人席1テーブルが入り口から入って左右に3テーブルずつ分かれており、そのなかから左側のトイレ横ソファに腰を下ろした。どの喫茶店でもグァテマラやコロンビアといった、ブレンドしないストレートな珈琲を愛飲しており、このお店もストレートは美味しく香りもよい。珈琲を喫み、煙草を喫む組み合わせは至福の時を創りだし、店内に流れる音楽や席から見える店内空間、差し込む光、揺蕩う珈琲の香り、老人たちの穏やかな会話、店員さんの暖かさとがこの空間の美しさに相まって共創している。
古本屋で購入した内田樹『武道的思考』を読みながら、レイメイ藤井のA5版システム手帳に万年筆でいつものようにあれこれ書き記していると、仕切りを越して隣向こうのテーブルに20代前半、大学生や新社会人あたりの男性二名と女性一名が席に着いた。店員の女性とは顔なじみなようだ。女性はどうもサークルか何かの先輩らしく、会話から察するに彼らからよく慕われているようだ。話しぶりや声音から、やさしさや上品さが溢れだしている。
社会人なりたての仕事に苦労されている話やサークル時代の想い出話といった、他愛ない話がBGMのクラシックと共にゆっくりと流れゆき、女性がお手洗いに立ってこちらの席が視界に入ったときに一瞬空気が止まった。視線や存在感などは昔から霊感で鍛えられているので、目を合わせたり視界に入れずとも見られているときの感覚はわかる。
その女性が化粧室から席に戻り、入店以来続けていた話の流れを変えた。
「話は変わるんだけど、オーラって見たことある?」となかなか唐突な180度も話題の違う質問に彼らは?が浮かび、間をおいてから無いと答える。「別に心を病んでいるわけじゃないんだけど」と前振りして有無を言わせず話を続ける。どうやらこの女性はちょくちょく人にオーラが見えるらしく「オーラが緑色だった人が黄色に変わってお金持ちになった」とか、「○○の会社の社長さんも見える人だよ」と、訝しがられぬように勇気をだして言葉を並べる。緑色というと顔が真っ青とか血の気が引くというように死物が連想され、黄色はその人が心の内から太陽の如く外を照らしているんだよなぁと聞き入っていると、男性も心を緩めて「見える友だちに灰色と言われた」と続き、笑いがおきる。オーラの話から段々逸れてゆき、俗によくある「死ぬのが近い人ほど~」といった話になっていった。それから数分後に彼女らは会計を終えてキレイに蟠りを残さず退店していった。
前世
前世 令和4年5月20日16時
寝屋川市の駅前にある喫茶店でいつものように本を読み、手帳に書き綴っていた。マイケル・ダボット著『投影された宇宙 ホログラフィック・ユニヴァースへの招待』だ。
ホログラフィックというと、アニメ『PSYCHO―PASS』や『攻殻機動隊』といったSF作品、実物の立体映像投影であればファッションショーや音楽ライヴ、店舗前にロゴを投影するなどで近年脚光を浴びている。機械本体はLEDをプロペラに多くつけて高速で回転させ、各LEDの点滅パターンなどを変えたりしてホロを投影できる代物だ。イメージ的には高価な発光する扇風機といったところ。大きさによるが一機あたり3万円程度から購入でき、3D化した映像をソフトウェアで調整して映し出すようだ。ホログラフィック技術はたしか4つほど確立されており、スマホと千円の小物で立体投影できるものもある。
先週木曜日の晴れた昼下がり、この喫茶店でエアコンから三テーブル目の窓際に座り読み書きしていると、「おもしろそうな本を読んでいますね」と声をかけられた。50代の女性で、九州の島独特の訛りのような話し方で暖かみのある印象だ。どうやら彼女は帰化人のようで、専門用語ではない日本語でも難度の高い用語となると、伝えたくても伝えきれず解りたくても解らず、といった言語の壁をひしひしと感じているようだ。彼女もこの本の類は日頃から興味があるようで、伝えきらず解り切らずとも会話が弾む。
お連れのもう少し年配の女性が「ご迷惑をお掛けしていたらすみません」と気にかけてくれる。二人は写真展や生け花教室などの縁あって行動を共にしており、普段は別の喫茶店によく居るらしい。「迷惑だなんてとんでもない」と返すと安堵して、話の邪魔しちゃ悪いと慮ってカウンターにいる喫茶店の店主の所へ話に行った。
中断されていた話が再開し、前世や生まれ変わりの話に移った。彼女は前世の記憶を保持しており、昔よりは記憶が霧散しているようだが追憶話をいろいろと教えていただいた。誰に話しても解ってもらえず茶化されることになるので、他の人にはこのことを打ち明けず黙っているようだ。
「あなたも前世を記憶しているんじゃないの」と問われたが、想起しても生憎と持ち合わせていない。と考えていると、何か引っかかる節があるようで首を傾げられた。生まれ変わり事例があるという情報はあるが、それを私自ら体験し記憶していることではない。霊感体験や共感覚、夢の記憶などいろいろ経験はあるんだが。
連絡先を交換して今度催される写真展に伺うことを約束し、その場を終えた。
2024/1~2024/7 記
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氣のひと|福山慎二Shinji.Fukuyama